ピアニストは御曹司の盲愛から逃れられない
「百合さん。やってみたいレコーディングとかある?」
「え?どうして?」
「今度、うちの会社で君のプロダクションと提携するだろ。レコーディングも考えてるんだけどさ、百合さんなら何を弾きたい?」
「……私ね、実はベートーヴェンのソナタ全曲演奏がやりたくて……でも事務所の先輩が予定してるからしばらく無理だと思うけれど。いつかやりたいなって思っているの」
「……ふーん。事務所は年功序列?」
「ということもないんでしょうけど、やはり私は駆け出しだから自分の意見はまだまだ通らないと思うわ」
「この世界は実力主義だろ。売れたもの勝ちだと思うぞ」