ピアニストは御曹司の盲愛から逃れられない
「……そうね。そうだといいわね」
百合が横を見て寂しげに笑う。何故だろうと思ったが、事務所で何かあるのかもしれない。彼女の希望を叶えてやりたいと思った。
「俺が会社で君を推薦してやるよ。楽しみにして」
彼女は目を大きくして、俺を見つめた。
「黎さんって、自信満々。何でもできちゃいそうね。今日はありがとう。とても楽しいわ」
「そう。俺も楽しいよ。美人と一緒だしね」
「もう。からかってばっかり。ほら、あっちの女性達に見られてるわ……ねえ大丈夫?」
「ああ。気にするな」