ピアニストは御曹司の盲愛から逃れられない

ふたりのアプローチ

 
 百合は悩んでいる。

 それは、もちろん黎のこと。
 先々週は美術館へ行った。昨日はオペラ。
 とても勉強になった。そして……楽しかった。
 
 どうしよう。また……約束してしまった。勉強のためだよって、あの顔で私に言うの。
 友達だから、いいだろって言うの……あの笑顔で。

 迷っている私を笑うように見ている。そして、私の片手を左手で握ってポンポンと右手で叩くの。大丈夫だよって。

 はあ。
 またため息が出てしまう。だって、何か勉強とは違うと思うの。やっぱり、なんとなく自信過剰かもしれないけど、いっつも特別だよって言って何か買ってくれたり、プレゼントくれたり。

 私は友達にそんなにプレゼントしないって怒ったの。プレゼントは誕生日とか、特別なときだけ。だから、やめてって頼んだ。
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