記憶喪失幼馴染は私への執着を隠さない
拓斗を見送って壁に寄り掛かる。鞄からスマホを取り出しポチポチと弄る。
ここからはこの近くのおしゃれなお店でランチを食べて解散になる。

それにしても楽しかったな。やっぱり私、拓斗のの事好きなのかなぁ…そう考えていると急に声を掛けられる。

「お姉さん一人?俺らと一緒にどお?」
「連れがいるんで…」

下卑た笑みを浮かべる2人組。
今時ナンパなんて廃れた文化だと思っていたがまさか実践する奴がいるだなんて。
「その連れより楽しませられる気がするんだけどなぁ~」
「そんな事、絶対ないので。それじゃ、失礼します」

気持ちが悪いのでもうその場から離れてしまおうと思ったが、ナンパ男に腕を掴まれてしまう。

「待てよ、お姉さん」
「今なら悪くしねーからよぉ」

その時

「おい」

威圧感のある低い声がする、拓斗だ。

「人の女に何してる。場合によっては只じゃすまないぞ」

そう言うと男たちはそそくさとどこかへ行ってしまう。
「大丈夫だった?」
「う、うん。平気」
「なら良かった。ごめんね、怖かったでしょ?」

優しく私に問いかけてくれる拓斗、この前とは違う優しさ。今はそれが染みる。

「ありがと、かっこよかった。惚れちゃうかも」
「ほんとに惚れてくれていいんだよ?」
「それは…保留で」

その後私たちは予定通りランチを食べ。解散になった。

「ほんとに送らなくていいの?」
「うん、大丈夫」
「そっか。それじゃあ、今日は楽しかったよ」
「私も、じゃあね」

彼はそれを聞くと車で行ってしまう。結局キーホルダーは渡せず終いだった。私は色々なもやもやを抱えながら。帰路に着いた。
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