僕は君と……
証明
私の恋人は、私に“欲しい言葉”を一切くれない。


“可愛いよ”
“君といると幸せ!”
“今日楽しかった!”

“好きだよ”

何一つ━━━━━

そしてクールな彼は、いつも表情がない。




試験で悪い点を取った私。

試験勉強はちゃんとした。
でも試験中体調が悪くなり、なかなか思うように解けなかったのだ。

落ち込んていた私。

でも彼は、やっぱり……欲しい言葉をくれない。


「ねぇ、なんか言って?」

「………しょうがないじゃん。体調悪かったんでしょ?」

「うん」

「じゃあ、落ち込んでても何も解決しない」


そんなこと、わかっている。

私はただ……

慰めて欲しかった。



デート中も。

「楽しいね!」
と言うと、

「うん」
と頷くだけの彼。


「映画、面白かったね!」
と言うと、

「そうだね」
と頷くだけ。


「………帰る?」

「え?」

「楽しくなさそうだから」

「そんなことないよ」

「いいよ。無理しなくて。帰ろ」

「………うん」

やっぱり彼は、頷いた。



家まで送ってくれた彼。

「………じゃあな」
小さく手を振る、彼。

「待って!」

「ん?」

「ねぇ!私のこと、好き?」

「………」

「………」

「うん」

「ほんとに?」

「うん」

「じゃあ、証明してよ」

「は?」

「私には、伝わってないよ。
だから、証明して」

「まだ、できない」

「は?」

「まだ、僕にはできない」

「意味わからない」

「………ごめん…」


謝って欲しいんじゃない。

私が欲しいのは、君に想われていると言う“安心”



「………もう、無理だよ」

「え?」

「私には、無理。
君の言う“証明”を待つ、広い心がない。
私は今!“証明”が欲しい」

「………」

「ごめんね。
バイバイ………」



毎日“不安”と戦いながらの恋愛は、私には無理だ。

友達カップルみたいに、笑い合って“楽しいね!”って言い合って、二人っきりの時でいいから“好きだよ”って言ってほしい。

淡々とこなすみたいな付き合いは、もう……


この時……私と彼は、高校一年生。

彼を忘れられず、好きなまま……時は過ぎていく。




そして━━━━二年後の、高校卒業式。

式を終え、門を出ると……



「証明、しに来たよ」

彼がいた━━━━━━


「え?なん…で…?」

「僕が君を“愛してる”って証明、しに来た!」


え?え?

愛…してる……?


「ずっと、待ってたんだ。
僕達が、18歳になるのを。
ねぇ、僕のお嫁さんになってよ。
僕は、君となら…幸せに暮らして行けそうなんだ。
僕が君を幸せにするから、君も僕の傍にいて幸せにして?」




彼は、言った。

あの時、僕が君に“愛してるよ”って言って、信じられてた?
たぶん、全く言葉の意味が伝わらなかったと思うんだ。

僕は君と出逢って、本当に幸せだったんだ。

でも、その気持ちを上手く表せなくて……

本当は、一生一緒にいたいくらい君が好きだった。

でも、高一の僕には何もできない。
親に守ってもらって立っている僕が、君を幸せになんて……

だから、待ってたんだ。

18歳になるのを………

そうすれば…僕は自分の力で立って、君を幸せにすることができる。




僕は、君に恋をしたんじゃない。



君を愛していたんだ━━━━━と。

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