エリート建築士は傷心した彼女を愛し抜きたい
 地下の駐車場に停めてあった蒼司の車に乗り込み、病院に向かう。今日は生憎の曇り模様、まるで自分の感情とリンクしているような気持ちになった。


「なんだか雨が降りそうですね」


「けっこう寒いし、雪になりますかね?」


「菜那さん、大丈夫ですよ」


 車に乗っている間も蒼司は菜那を励まし、気を逸らしてくれるような会話をしてくれた。そのおかげで一人でいる時よりも遥かに気が軽く、病院に着いた頃には気丈に振舞えていたと思う。


「お母さんっ」


 急ぎ足で廊下を進み、勢いよく病室の扉を開けた。


「あら、菜那。どうしたの?」


「へ……?」


 母親はベッドの上で起き上がり、雑誌を開いていた。鼻に管が通り、酸素を入れられているとしてもなんだか元気そうに見える。顔色だってこの前来た時より全然いい。


「え……呼吸が浅くなってるって……大丈夫、なの?」


「全然大丈夫よ。やだ、看護師さん菜那に電話しちゃったの? 心配かけてごめんね」


「そう、なんだ……」


 その言葉にガクンと身体の力が抜けた。


「っと、危ない」


 足の力が抜けた菜那を蒼司がタイミングよく抱き支える。

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