エリート建築士は傷心した彼女を愛し抜きたい
(な、名前で!? そんなっ……でも確かに恋人なのに宇賀谷様はおかしいよね……)


 分かりましたの意味を込めて菜那はもう一度頷いた。


「なーに二人でこそこそしてるの?」


「な、なんでもないよ。その、言いそびれてたんだけど今お付き合いしてる宇賀谷蒼司さん。凄く優しくていい人なの。今日もその、そ、蒼司さんが病院まで送ってくれたんだ」


 名前を言うだけでこんなにも体力を使うなんて知らなかった。蒼司は満足げに目を細めて笑った。


「わたしなんかより菜那さんの方がとても優しくて、気が利きますし、本当に好きであるとともに尊敬もしています。菜那さんの作る料理は本当にどれも美味しくて、胃袋までガッチリ掴まれてしまいましたよ」


 蒼司の言葉を聞いて顔が燃えるように熱くなる。


(料理は気に入ってもらえてるのは分かってたけど、尊敬? 私の事を?)


 一体自分のどこを尊敬してくれているのか凄く気になった。思い当たる節なんて一つもない。

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