エリート建築士は傷心した彼女を愛し抜きたい

蒼司side

 コートを羽織り、蒼司はマフラーを首に巻いた。マンションの外に出るとひんやりと冷たい風が蒼司の頬を通り抜けていく。


 ……菜那はお別れ会を楽しんだだろうか。


 菜那の事を思いながら夜空を見上げ、歩き始めた。


 お店の照明に照らされながら歩き進めると菜那がお店の前で立ち、夜空を見上げていた。今日は晴れていて星が綺麗にみえるもんなぁと思いながら近づくが蒼司には夜空に浮かぶどの星よりも輝いているように菜那が見える。
 

「綺麗な星だなぁ」


 ぼそりと菜那が呟いた。


「ですね。でも、こんな綺麗な星空だとしても夜道に女性一人は危険ですよ」


「っ……蒼司さん? どうしてここに?」


 菜那が驚いて蒼司を見上げた。


「妻が夜遅くに一人で出歩くなんて心配で迎えに来てしまいました」


「そんな、大丈夫だって言ったのに。お店だってマンションから近いんですから」
 

「いいんです。俺が菜那さんと少し夜道の散歩をしたいなって思ったから。ね?」


 蒼司は菜那の手をそっと握った。お酒を飲んだからか菜那の体温が少し高く感じる。

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