エリート建築士は傷心した彼女を愛し抜きたい
「やっ……」


 耳まで真っ赤にして菜那は困った顔をした。その顔が男を誘ってしまうのも無自覚なのが恐ろしい。


「エロい男は嫌ですか?」


 蒼司は畳みかけるように菜那に囁く。


「それはっ……」


「それは?」


「き、嫌いじゃないです。でも……それは蒼司さんだからであって、蒼司さんじゃなきゃ嫌」


「貴女って人は本当に……」


 蒼司も困ったように笑い髪を掻き上げた。


「蒼司さん、マンションに着きましたよ。あの……本当に今日から一緒に住んでもいいんですか?」


 ピタッと立ち止まって菜那は不安げに蒼司を見つめた。大きな瞳からは少し不安を感じとれる。そう思うのも仕方ない。ここまで来るのにゆっくりでいいと言っておきながら急がしてしまったのは自分なのだから。

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