エリート建築士は傷心した彼女を愛し抜きたい
「……幸せだなぁ」


 菜那の寝ぐせでうねっている髪を優しく撫でながら蒼司は菜那から視線を逸らさない。朝からドキドキしすぎて、こんな生活が毎日だと思うと思わず頬が緩んだ。


「あの、私朝食の準備をしますね。蒼司さんはご飯派ですか? パン派ですか?」


 昨日の昼間、菜那の荷物は全て引っ越し業者が運んでくれた。一緒に住み始めた日の朝が肝心だと思い、菜那は荷物を運んでもらっている最中に急いでスーパーに買い物を済ましていたのだ。和食も洋食もどちらでも対応できるくらいの食材を買い込んである。


 蒼司は少し悩んで「ご飯かなぁ」と呟いた。


「ご飯ですね。招致しました。では準備に取り掛かります」


 布団から足を出そうとした瞬間、そっと抱き寄せられ、蒼司の胸に頬が触れる。


「へ……あの、蒼司さん?」


 朝の蒼司の鼓動はとても穏やかだ。

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