エリート建築士は傷心した彼女を愛し抜きたい
 菜那の姿に気が付いた蒼司が振り返る。


「菜那さん、とてもお似合いです。いつもの黒のスラックスもいいですがスカートも可愛いですね」


「なっ……す、すぐにご飯の準備をしますね」


 くすくすと笑っている蒼司の横をすり抜け、菜那はエプロンを付けた。いつも蒼司の前で着けていた黄色のエプロンではなく家で使っていた北欧風の可愛いエプロンだ。


(……ちゃんと可愛い服を着て正解だったな)


 緩む頬を引き締めて、菜那は手際よく朝食の準備を進めていく。一号分のお米を洗い、フライパンで炊き上げることによって十分程度でお米が炊き上がる。その間にだし巻き卵と鮭を焼き、わかめとネギの味噌汁を作った。ざっと十五分もかからずにダイニングテーブルにずらりと立派な朝食が並んだ。


「凄く美味しそうです。こんなちゃんとした朝ごはんは何年振りだろ」


 椅子に座った蒼司が綺麗に両手を合わせた。それに合わせて菜那も両手を合わせる。


「いただきます」


 二人の声が自然と重なった。だし巻き卵を綺麗に箸で割り、パクリと一口食べると蒼司は目を細める。

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