エリート建築士は傷心した彼女を愛し抜きたい
「とても美味しいです。こうして菜那さんと一緒に食べるのは初めてですね」


「確かに一緒に食べるのは初めてですよね。お口に合ってよかったです」


「菜那さんの作る料理はどれも美味しいですよ」


 最高の誉め言葉に菜那の頬は赤く染まっていく。


「あ、そうだ。今日は一日家を出るので帰りは八時を過ぎてしまうと思います」


「そうなんですね。私も今日は職安に行って見ようと思います。新しく働く場所を探さないと」


「俺は菜那さんが家にいてくれるのも嬉しいですけどね。でも菜那さんのやりたいことを応援しますよ。俺に出来ることがあったら遠慮なく言ってくださいね」


 温かな眼差しに少し胸が痛んだ。


 新しいことに挑戦したい、そう思う気持ちはあるけれど実際何をしたいのかも分からなかった。夢が元からあったわけでもない。


「今日の晩御飯はどうなさいますか?」


 話を逸らしてしまった。

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