エリート建築士は傷心した彼女を愛し抜きたい
「菜那さん? どうしました? もしかして具合が悪いんですか?」


 トントン、とトイレのドアが鳴った。帰ってきてすぐ、ただいまの挨拶もせずにトイレに駆け込んだ菜那を心配した蒼司がトイレのドア越しに心配しているのがわかる。


「蒼司さんっ、その、大丈夫です! 今出ますのでっ」


 慌てて身だしなみを整えてトイレを出るとリビングで心配そうに立っている蒼司と目が合い、菜那は慌てて妊娠検査薬を自分の後ろに隠した。


「何を隠したんですか?」


 菜那の目の前に立った蒼司はジロッと菜那を見下ろし、後ろに隠した妊娠検査薬をあっという間に菜那の手から奪い去った。


「あぁっ!」


 妊娠検査薬を手にした蒼司は目を皿のように大きくし、凍ってしまったかのように動かない。


「あの……蒼司さん?」


 目の前で手をヒラヒラ振ってみるがまだ動かない。


「おおーい? 蒼司さん?」


 もしかして、嫌だったとか……?


「これは、その、まだ確定ではなくてですね」


「嬉しい」


 視線を泳がせばがら慌てる菜那の言葉を打ち消すくらいの明るい声だった。

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