エリート建築士は傷心した彼女を愛し抜きたい
「もちろんですよ。でも俺の前だけって約束ですよ?」


「蒼司さんも泣くときは私の前だけにしてくださいね?」


 コツンと額に蒼司の額が重なり、二人の笑い声が交じり合った。


 幸せすぎて怖いという言葉が少し分かる気がする。蒼司に出会って人生が変わり、幸せと思うことしかない。


 幸せだと気も緩むらしい。ぐぅっと菜那のお腹の虫が鳴った。意味がないとはわかっていても慌ててお腹を両手で押さえる。


「……聞こえちゃいましたか?」


 恐る恐る聞くと蒼司はクスクスと上品に笑っている。完全に聞いた人の反応に菜那は恥ずかしさのあまり肩を落とした。


「お昼ご飯にしましょうか。今日は俺が作ります」


「ええ!? 蒼司さんがですか?」


「俺だって苦手なだけで簡単なものだったら作れますよ。味の保証はできませんけどね」


 蒼司は菜那の手を引いてソファーに誘導し、菜那だけを座らせた。

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