エリート建築士は傷心した彼女を愛し抜きたい
「蒼司さん、凄く美味しいです」


 菜那が言われて嬉しい美味しいという言葉。この一言で嬉しい、また頑張ろうと思える魔法の言葉をソファーの隣に座っていた蒼司の顔をしっかりと見て伝えた。


「よかった。味見もしたんですけど、やっぱりなんか違うかなぁと思ってしまって。でもこれから菜那さんも悪阻で大変になるでしょうから俺も出来る限りの事はしますからね。一人で頑張りすぎないように」


 蒼司はすっと右手の小指を立てて菜那の前に差し出した。


「約束ですよ?」


「あっ」


 指切げんまんだ。


 いつも大人の余裕たっぷりの人の行動が余りにも可愛らしすぎて愛おしさが込み上げてくる。菜那は満面の笑みで小指を差し出し、絡めた。


「指切げんまん、頑張りすぎちゃ~だめですよ、指切った」


 余りのゴロの合わなさに菜那は思わず吹き出して笑った。


「ははっ、嘘ついたらじゃないんですねっ」


「菜那さんは俺に嘘つかないでしょう? 多分ついてもすぐにバレてしまうと思いますよ。菜那さんは素直で優しい人ですから」


「なっ……それはまぁ、嘘はつかないですけど……」


 面白くて笑っていたはずの笑みが照れ隠しの笑みへと変わる。照れ隠しに菜那はうどんを啜った。

(美味しいけど、ずっと見られてると恥ずかしいよ……)


 菜那のコロコロ変わる表情を見て蒼司は満足げに菜那を見つめていた。

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