エリート建築士は傷心した彼女を愛し抜きたい
「菜那さん、大丈夫ですか? 顔色が悪いですから無理せず横になっててください」


「大丈夫ですよ」


 無理して笑う菜那に気が付いたのか、蒼司は菜那の元に寄り添い両肩に手を添えて寝室まで誘導した。


「あ、あの、蒼司さん?」


 菜那と一緒になぜか蒼司まで一緒にベッドに横になっている。


「俺もちょっと疲れたから一緒に休憩しましょう。おいで」


 蒼司は片腕を伸ばし、菜那を誘い込む。どうしようかと迷っている菜那を蒼司は優しく引き寄せ腕の中に菜那を包み込んだ。 


「蒼司さん……」


「ん?」


「いえ、なんでもないです」


 本当は分かっている。蒼司は菜那の為にこうして自分も休憩すると言って菜那が休みやすいようにしてくれていることも。優しい人だ。いつも菜那のことを優先してくれる優しい人。


 なのに蒼司に対して自分は何が出来ているだろうか。褒められた料理もまともに作ることが出来ない。家を綺麗に保つことも出来ない。自分の唯一の取柄である家事が何も出来ないことに菜那の気持ちは落ちていく一方だった。

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