エリート建築士は傷心した彼女を愛し抜きたい

「菜那さん、仲良くしてね。蒼司くんのことで分からないことがあったら何でも聞いて？　なんでも教えてあげるから」


「へ……？」


　今、なんて？


「あの、町田さん……？」


　恐る恐る愛羅の顔を見上げると一瞬だけ、鬼のように怖い顔をした愛羅が見えた気がする。その表情があまりにも怖くて背筋に寒気が走った。


「そうだ、蒼司くん。久しぶりの再会なんだから夜、ディナーに付き合ってくれない？」


　猫のように甘えた声を出した愛羅は菜那と蒼司の間に割り込んできた。


（え……夜は……でも、久しぶりの再会だし、蒼司さんも断れないよね……）


　蒼司は一歩下がり、愛羅から遠ざかるとしゅんっと肩を落としていた菜那を引き寄せた。


「そ、蒼司さん？」


「ごめん。今日は妻と大事な約束があるから。また今度な」


「ちょっと、蒼司くん！」


　機嫌の悪い愛羅の声をスルーし、菜那の腰に手を回した蒼司はゆっくりと歩き出した。