エリート建築士は傷心した彼女を愛し抜きたい
「好きです。好きです。大好きなんですっ」


「菜那さん……」


「好きって気持ちだけじゃダメですか?」


 蒼司の身体に埋めていた顔を上げると真っ赤な顔をした蒼司と目が合った。


「ちょっと失礼」


「あっ」


 ふわりと身体が宙に浮いた。まるであの日のようだ。蒼司の父親のパーティーに参加したあの日、彼にこうして抱き上げられ、告白された時を思い出す。


 人目を気にする素振りなく、菜那を軽々と持ち上げた蒼司はスタスタと歩き進める。誰もいないエレベーターに乗り込み、扉が閉まった。


「蒼司さん」


 菜那は両手を蒼司の首に回し、自ら唇を重ねた。好きで好きで誰にも取られたくない。そんな感情は生まれて初めてだ。


「んんっ、蒼司さん……好き……すきっ……」


「菜那さん……俺の方が……好きだ」


 キスの合間に何度も愛の言葉を繰り返す。息をするのも惜しいほど、愛おしい。

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