エリート建築士は傷心した彼女を愛し抜きたい
「私は……」


 菜那はそっと自分のお腹に触れている蒼司の手に両手を重ねた。


「私もです。蒼司さんの為になにかを頑張りたいって思いますし、支えたいって思います。でも……それが出来ない自分が嫌になったことも確かです。私にはこれと言って得意なことがあるわけでもなくて、本当に家事くらいしかできないのに、悪阻で何もできなかった自分が嫌になりました。私は今日の会場にいる人たちのように仕事面では蒼司さんを手助けできるわけもなくて、でも……」


 菜那はくるりと顔を蒼司に向け、しっかりと視線を合わせた。


「やっぱり貴方が好きなんです。この子のことも凄く大事で、愛してるんです」


「うん。その気持ちだけで俺は十分ですよ。俺も菜那さんを愛してる」


 ゆっくりと瞳が閉じて唇が重なった。凪のような穏やかなキスに心も身体も満たされる。この気持ちを大切にして、自分なりに頑張ろうと思えた。蒼司の為に、お腹の中の子の為に強くなる。

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