エリート建築士は傷心した彼女を愛し抜きたい
「なんでお前がここにいるんだ? まさか、転職した俺を探してここまで来たとかじゃないだろうな?」


「なっ……!」


 委縮する菜那に対して樹生は急に傲慢な態度になりニヤリと笑った。


「お前、俺の事大好きだったもんな。本当あんな別れ方になって悪かったと思ってるよ。にしても今日はドレス着てるから随分綺麗じゃん」


 何も変わらない樹生の態度にうんざりする。それに、再会したとしても全く心が揺らぐこともない。ただただ嫌な思い出が蘇るだけで菜那にとって樹生はもう過去の存在になっていた。
 菜那はジロジロ見てくる樹生に背を向けて歩き始める。


「おい、菜那待てよ。もうすぐ交代の時間だから俺の部屋にこいよ。久しぶりに話そうぜ」


 ぱしんと腕を取られ、ゾクゾクと嫌悪が背筋に走る。元カレといえど、触れられるのは嫌だ。もう蒼司にしか触れてほしくない。触れたくない。それに蒼司が誠心誠意、力を込めて作り上げたこのホテルの部屋に樹生がいると思うと嫌気がさす。


「……離して」

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