エリート建築士は傷心した彼女を愛し抜きたい
 会場を抜け、ひとけのない廊下にさしかかると蒼司はいきなり足を止めた。


「菜那さん」


 地鳴りがしそうなほど低い蒼司の声に菜那は肩をビクッと震わせた。


「そ、蒼司さん……? ッ――!」


 ドンっと鈍い音と共に菜那の背は壁につき、蒼司に頭上から見下ろされている。両手で行手を阻まれ、壁と蒼司の間で菜那は不安げな表情を見せた。


 確実に蒼司が怒っていることが声、視線、肌からも感じ取れる。


「蒼司さん、怒ってます、よね……」


「怒ってますね。最愛の妻を馬鹿にされて。俺がもっと早く菜那さんと出会ってればって悔しくもあります」


「そんな……蒼司さんが怒るような事じゃ――んんっ……」


 突然唇が塞がれ、熱い舌が菜那の舌を絡みとる。壁に押し当てられるように力強いキスに足元から崩れ落ちそうになった。必死で蒼司の舌に絡みつき、腕も首に回してしがみつく。
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