エリート建築士は傷心した彼女を愛し抜きたい
(初めて蒼司さんの家に来た時は曇り空で景色が悪かったっけ……)


 今日は空一面、水色のいい天気だ。


「菜那さん」


 後ろから名前を呼ばれて振り返ると支度を終えた蒼司が立っていた。


「蒼司さん」


 家の中でのラフな姿もかっこいいがスーツでビシッと決まっている蒼司も大人の色気が溢れている。艶やかな黒髪から覗く切れ長の瞳はいつも優しく菜那を捉えてくれていた。


「じゃあ今日は一日外で打ち合わせと税理士さんに会うので、帰りは夕方になると思います」


「分かりました。頑張ってくださいね」


「ありがとうございます。菜那さんも無理しないで、ゆっくり過ごしてくださいね。きっとこの子が産まれたら忙しくなるだろうから。でも、それが今は凄く楽しみなんだけどね」


 蒼司は大きくなった菜那のお腹を愛おしそうに撫でながら立膝をつき、そっと耳をお腹に添えた。

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