エリート建築士は傷心した彼女を愛し抜きたい
「どうぞ。最近ルイボスティーにはまってるんです」


「……ありがとう」


 怒っているのに、お礼は言ってくれるんだ、と愛羅への印象が少し良くなった。自分と同じで蒼司の事が好きで誰にも渡したくないっていう気持ちが強いだけなんだと。お茶を眺める愛羅の隣に菜那も腰掛け、一口お茶を飲んだ。


「その、町田さんも蒼司さんが好き、なんですよね?」


「当たり前でしょう……」


 愛羅は視線をお茶に落としたまま口を開いた。


「私と蒼司くんは子供のころはずっと一緒だった。高校生の頃、私がアメリカに引っ越さない限りずっと一緒に居られたのに。離れていても建築家を目指してる蒼司くんの力になれるように沢山勉強して、人脈を作って、時間はかかったけど、ようやく蒼司くんの力になれるくらいの力をつけて日本に戻ってきたのに……こんな何の力もない女に奪われてっ」


 キッと涙を拭くんだ瞳に睨まれるが菜那は微々たりとも視線をずらさない。


「蒼司くんを返してよ!!!」


 愛羅は泣き叫ぶような声で気持ちを訴えてくる。こんなにも真正面から気持ちをぶつけてくれた愛羅に対して、自分の気持ちもしっかりと伝えなければ。相手にとってそれは残酷な言葉かもしれないけれどきっと真っ直ぐな愛羅なら分かってくれるはず。菜那も愛羅の方を向いて座り直し、ピンと背筋を伸ばして力強い瞳で見つめ返した。

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