エリート建築士は傷心した彼女を愛し抜きたい
 愛羅の顔がどんどん顔が赤くなっていく。罵倒を浴びせてきた相手なのにそんな姿が可愛いと思えた。菜那は愛羅の両手を取り、胸の前で握りしめた。


「町田さん、どうしますか? 無理強いはしません」


「私……いいわ、言わない。なんか力説されちゃってしらけちゃった~。帰るわ」


 愛羅はそっと菜那の手を解いて耳元に顔を近づけた。


「蒼司くんが菜那さんを選んだの分かった気がするわ。イジメてごめんね」


 菜那にしか聞こえない声でそっと囁く愛羅。菜那は目を大きく見開き、すぐに柔らかく細めた。


「蒼司くん、急にお邪魔しちゃってごめんね。もう帰るから、菜那さんとお幸せに。元気な赤ちゃん産んでね~」


「愛羅……ありがとう」


「別に。尊敬しているお兄ちゃんが結婚したんだもの。今度は出産祝いでももってくるわ」


 ひらひらと手を振りながら愛羅は玄関へと向かった。菜那と蒼司もそろって愛羅の背中を追いかけ、玄関に向かう。


「あの……町田さん……」


 ヒールを履く愛羅の背中に話しかける。


「ありがとうございます」


 その瞬間、ポコッとお腹も動いた。

< 191 / 220 >

この作品をシェア

pagetop