エリート建築士は傷心した彼女を愛し抜きたい
 すっと立ち上がった愛羅はなんだか吹っ切れたような明るい顔をしていたことに菜那はニッコリと微笑んだ。


「じゃあね~」


 バタンと閉まった玄関ドアに思わずホッとため息が零れ落ちた。


「菜那さん、今日のこれは一体なんですか?」


 隣に立つ蒼司の声が少し怒っているように感じる。


「あ、えっと……と、とりあえず座りませんか?」


 あはは、と苦笑いしながらソファーに座った。何から話そうかと頭の中でうんうん考えていると蒼司にふわりと抱きしめられる。


「あっ、えっと、蒼司さん……?」


「ごめん。会話の内容からですけど、俺が愛羅の気持ちに気が付いてたのにちゃんと断りを入れてなかったせいですよね?」


「蒼司さん、町田さんの気持ちに気が付いてたんですか? 私ったらてっきり気が付いていないのかと」


「まぁなんとなくですけど。でも愛羅に直接言われたわけじゃないから断るのもなんか違うよなぁって思ってしまってて。まさか忘れ物をして帰ってきたら修羅場になってたんで驚きました。でも、俺が口を出さなくて正解でしたね。菜那さんは本当に強くて、優しい人だ」


 蒼司の吐息が耳元を擽った。

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