エリート建築士は傷心した彼女を愛し抜きたい
「蒼司さん……」
「このまま、食べちゃいたいな」
「え……」
ドキっと心臓が飛び跳ねた。
「あの、蒼司、さん……?」
「ははっ、お茶が冷めないうちにカステラ食べようかな」
「あっ、カステラ、そうですよね! カステラ! 食べてください!」
二人で蒼司の部屋にあるソファーに座った。隣に座った蒼司はお茶を飲みながら時折ぼーっとしている。
(やっぱりそうとう疲れてるんだな……私が何か力になれればいいんだけど、建築のことはさっぱりだし……でも愚痴とか、話くらいなら……)
菜那は前を向いていた身体を蒼司の方に向けた。
「蒼司さん、最近凄い忙しそうですけど今は何の建築? してるんですか? また大きなホテルとかですか?」
「ん、今ですか。今は一軒家の設計です。この前完成したホテルのオーナの息子夫婦が家を建てたいとのことで俺に依頼してくれたんです。でも案外難しくて……ほら、俺って家事は苦手だから家事のしやすい家っていう注文に頭抱えちゃってて」
「え……」
ハハハ、と笑いながら前髪を掻き上げる蒼司に菜那はこれ以上ないなにかを感じていた。
ーーもしかしたら自分も何か力になれるんじゃないか、と。