エリート建築士は傷心した彼女を愛し抜きたい
「蒼司さんっ!」


 菜那は身体を前のめりに突き出し、蒼司の太腿に両手をついた。


「菜那、さん……?」


 キョトンとした瞳で蒼司は菜那を見るが菜那はそのままの勢いで蒼司と距離を詰めた。


「今なら、私、蒼司さんの役に立てるかもしれません!」


「私の得意分野は家事ですよ? それはもう沢山のお宅を訪問してきましたから、このお家はこのキッチンがいいな、とか、洗面所の工夫とか、あ~でもキッチンと洗面所が繋がってたらもっと動きやすいな~とか!」


「なんでも、なんでも聞いてください!」


 次から次へと飛び出す言葉の嵐に言い切った後にはハァハァと息が切れていた。


「あっ……ご、ごめんなさい! つい、蒼司さんの力になれるかと思ったらなんかこう、止まらなくて」


 視線を足元に落とし、すすすと肩を縮ませてソファーに座りなおした。


 ……やってしまった。 


(絶対蒼司さん引いてるよね……)


 チラッと蒼司を見ると目が合った。

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