エリート建築士は傷心した彼女を愛し抜きたい
「菜那っ、頑張れっ!」


「蒼司さんっ、ンんんッ~~~!」


 蒼司の手を握りながら最後まで踏ん張る。


「菜那っ、もう少しだ、頑張れっ!」


「ンん~~~っんあぁ!」


 あ……。


「ふぎゃぁ、んぎゃあ」


 か弱いのにしっかりとした赤ちゃんの泣き声が聞こえた。


「産まれましたよ。おめでとうございます。可愛い女の子ですね~! 胸の上にのせますよ~」


 先生の言葉に一瞬で視界が涙でぼやけた。柔らかな重みが胸の上に感じ、そっと両手で包み込む。


「あっ……うぅっ……赤ちゃん、赤ちゃん……嬉しい、ずっと会いたかった……」


 この嬉しさに比べたら、痛みなんて飛んで行ってしまった。


「菜那、ありがとう。ありがとうっ……」


 蒼司の声も震えている。顔をずらして蒼司を見るとボロボロと涙を流していた。初めて見る蒼司の涙にますます涙が溢れる。


 幸せで胸がいっぱいだ。素敵な旦那様に天使のように可愛い我が子。この二人を守りたい、そう強く思った。


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