エリート建築士は傷心した彼女を愛し抜きたい
「本当に俺と出会ってくれてありがとう」


「私もです。こんな私を見つけてくれてありがとうございました」


「菜那、あのさ――」


「……ぎゃぁ、おんぎゃぁ」


 すぐに和香那を見ると両手をグーにして泣いている。


「あらら、起きちゃったんですね。すぐに抱っこしてあげたいけどあと少しで着くから、和香那、待っててね」


「和香那~、もう着くぞ~」


「それで、蒼司さん、話の続きはなんですか?」


 首を傾げて蒼司を見るとくすくすと笑っている。和香那が産まれてからこうして会話が途切れることが多いけれどお互い全く気にしていない。現に今だって蒼司は嬉しそうに笑っている。


「話の続きはまた今度でいいです。さぁ病院に着きますね。和香那~もう着くから泣かなくていいんだよ~」


 病院に着き、車を駐車場に停めると菜那も蒼司も急いで車から降りて後部座席のドアを開けた。するとさっきまで泣いていた和香那がまたすやすやと眠っている。菜那がつん、と頬を優しくつついてみるが起きる気配がない。

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