エリート建築士は傷心した彼女を愛し抜きたい
「私、ずっと自分には何もないと思ってました。空っぽの人間だなって……でも、やっと私もやりたいって思えることが出来たんです」
蒼司は口をはさむことなく、優しくうんうん、と相槌だけを打ってくれている。
「その、私も蒼司さんと一緒にお家をつくりたい、といいますか、なんといいますか……整理収納アドバイザーとか色々な資格を取って、住むお客様が快適に家事が出来るお家を作りたいなって思ったんです。蒼司さんがあまり一軒家を設計していないのは聞いてますけど……陣痛が来た日、蒼司さんに設計図を見せてもらったじゃないですか。その時、今まで感じたことのないくらいの高揚感といいますか、やりたいっていう意欲が湧き上がってきたんです。だからその……」
一緒に働かせてください、は図々しいし、弟子にしてください? もなんか違うような気がする。
適切な言葉が見つからず口籠っていると「凄くいいタイミングです」と菜那を抱き寄せた。