エリート建築士は傷心した彼女を愛し抜きたい
 人生の絶望ってこういうことを言うのかな。
 昨日からなんだか悪いことしか起こってない気がする。いいことと言えば、優しい人に助けてもらったことくらい。昨日、また頑張ろうと思えたはずなのに、また一瞬で地獄に落とされてしまったようだ。


 フリーズしてしまっていた菜那に社長はパンっと両手を叩いて明るく笑う。その音で菜那もハッと我に返り、社長を見た。


「でもいい知らせもあるのよ? 新規の案件入ってきたから、今日行ってもらえる?」


「え? 今日の今日ですか?」


「そう。頼むわね」


「……はい。頑張ります」


 少し力ない返事だったかもしれない。正直言って、今の自分には自信が無かった。


(でも、ウジウジしてたって意味ないもんね……社長だって辛いのに、きっと私に心配をかけないように無理矢理笑ってるのかも……)


 菜那は立ち上がり依頼者の元へ行く準備を始めた。
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