エリート建築士は傷心した彼女を愛し抜きたい
 使った雑巾を洗い、ふぅと深呼吸をして気持ちを落ちつかせると菜那は蒼司の元へ向かった。しばらく蒼司の視線を感じなかったのは仕事に没頭していたからのようだ。真剣に画面を見ながら手元を動かしている。


(……かっこいいな、って何キュンとしちゃってるの、私!)


 浮気されて、振られたばかりなのに他の男性にキュンとしてしまうなんて。でも、仕事に一生懸命な人って素敵だな、と思ってしまう。容姿うんぬんではなく、目の前にある課題を真剣に取り組んでいる姿は誰だってカッコいい。


「宇賀谷様お仕事中に失礼します。リビングの掃除はある程度終わりましたので、お時間的に料理の方に移りたく、買い物に行きたいのですが……ご一緒されますか?」


「わ……凄く綺麗です。いつの間にか仕事に集中しちゃってたんだ。買い物ですよね? 車を出しますので一緒に行きましょう」


 パソコンを閉じ、とった眼鏡をパソコンの上に置いた。


「お車出してもらってよろしいんですか?」


「もちろんです。荷物だって重いですからね。さぁ、行きましょうか」


 歩き出す蒼司の後を鞄を持ってついていく。家を出て、エレベーターに乗り込んだ。

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