エリート建築士は傷心した彼女を愛し抜きたい
「本当にリビングが凄く綺麗になりました。インテリアとか、職業柄ついこだわって買ってしまうんですけど、その後の手入れが間に合わなくて」


 菜那の隣に立つ蒼司は恥ずかしそうに目を細めて笑う。狭い空間だからか、蒼司の柔らかく低い声がやたら響いて聞こえた。


「職業柄……インテリアコーディネーターさんなんですか?」


「いえ、俺は建築士です。今更ですけどこれ名刺です」


 蒼司は名刺入れから一枚の名刺を取り出し菜那に差し出した。


 菜那は「ご丁寧にありがとうございます」と名刺を受け取りまじまじと見る。UGY建築事務所 一級建築士 代表取締役 宇賀谷蒼司と書いてあった。


「わ……建築士の社長さん……」


「個人でやってるから社長っていうのもなんか違うけど。家で仕事をしてる分、散らかってしまうんですよね。まぁ仕事を言い訳にしてるだけですけど」


「家を設計したりできるなんて、尊敬します。仕事に集中してたらなかなか家事まで手が回りませんよ」


 自分に誇れる仕事があるって凄いなぁ、と率直に思った。

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