エリート建築士は傷心した彼女を愛し抜きたい
 ポーンっとタイミングよくエレベーターが一階に着き、先に男性が下りて行った。そのまま何故か蒼司に腰を抱かれたまま歩き出す。


「宇賀谷様っ、あの、離していただけませんか!?」


 顔を真っ赤にした菜那が足を止めると、蒼司もピタリと止まった。


「あ、すおません。つい……大丈夫でしたか?」


 パッと腕が離れ、菜那を見つめる漆黒の瞳はなにやら心配の色が見える。


「えっと、何がでしょうか? あ、もしかしてハンバーグが作れるかとかの心配ですか?」


「いや、なんだか瞳が潤んでいたような……」


 首をかしげると、ははっと蒼司は笑い、また優しい表情を見せた。


「いや、なんでもないです。買い物に行きましょうか」


「はい」


 歩き進めた蒼司の後を菜那は首をかしげながら着いていった。

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