エリート建築士は傷心した彼女を愛し抜きたい
 引き寄せられてしまいそうな熱い視線に菜那は大きく目を見開く。あまりにもストレートすぎる言葉に菜那は返す言葉も見つからない。驚きのあまり止まらなかった涙は少し減り、瞳に溜まっている。


 そっと蒼司の大きな手が右頬に触れ、一瞬の出来事だった。


 自分の唇に蒼司の熱い唇が重なっている。


「んっ……」


 腰はきつく抱き寄せられ、離れることができない。けれど、突飛ばそうとは到底思えなかった。それよりも蒼司から感じる熱が心地よくて、ズタズタに傷ついて壊れそうだった心を修復してくれるかのよう。ポロリと溜まっていた涙が一粒の雫となって頬を流れた。


 ゆっくりと離れていく唇にじわじわと現実に引き戻される。


「菜那さん」


「あ……」


 キスしてしまった。しかもお客様と。

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