エリート建築士は傷心した彼女を愛し抜きたい
「あっ、えっと、そのっ……」


 菜那が口籠っているとタイミングよくスマホのアラームがピピピ、ピピピと鳴った。


「あ、お時間になってしまいましたのでこれにて失礼いたしますっ!」


「えっ、ちょっとっ」


 呼び止める蒼司の事を無視して、勢いよく自分の荷物を鞄に詰め込み、走り去るようにして蒼司の家を出た。


(どどどどどどどうしよう!)


 ――キスしてしまった。


 バックン、バックンと心臓が破裂しそうな勢いで動いている。エレベーターという小さな個室に一人だからだろうか。余計に心臓の音が大きく感じる。

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