エリート建築士は傷心した彼女を愛し抜きたい
(どうしていいのか分からなくて逃げてきちゃってけど……でも……)


 菜那は両手で緩む口元を隠した。


(嬉しかった)


 蒼司の言葉が、蒼司の温もりが、彼から与えられるもの全てが菜那の中に溶け込むように入ってくる。出会った時から彼は優しかった。だからきっと、傷だらけの菜那の心を彼は絆創膏を張ってくれたのかもしれない。


「また、頑張ろう……」


 菜那はボソリと呟いた。

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