エリート建築士は傷心した彼女を愛し抜きたい
「あの……電話なってますので、お気になさらず出てください」
「あ~、すいません。すぐ終わらせるんで、待っててもらえますか?」
「わかりました」
蒼司はすいませんと軽く頭を下げながらテーブルの上のスマホを取り少し表情を歪めた。ほんの数秒、画面を眺めてからスマホを耳に当てる。菜那は聞いちゃいけないと思い、キッチンシンクの掃除を始めた。
「はい」
初めて聞くような低くて硬い蒼司の声色に驚いた。聞いちゃいけないとわかっているのに蒼司の事が気になってしまい、つい聞き耳を立ててしまう自分がいる。変わらず硬い相槌を打ちながら額に手を当てて明らかに困っている顔を見せた。
(仕事でなにかあったのかな……? って、お客様のプライベートに踏み込んじゃダメダメ)
キュッキュッと音が鳴るくらいにシンクを綺麗に拭き上げて気を紛らわせた。
「何度も言ってるけど、俺はいかないからな」
「……いるんだよ。俺には決めた人が」
「勝手に話を進めるなよ。……って、切られたか」
――決めた人。
その言葉が菜那の中で妙にはっきり聞こえた。決めた人とは誰だろう。一般的に一番考えられるのは結婚相手、とかだと思うが蒼司の家には女の人の影は感じない。じゃあ、一体誰なんだろうか?
「あ~、すいません。すぐ終わらせるんで、待っててもらえますか?」
「わかりました」
蒼司はすいませんと軽く頭を下げながらテーブルの上のスマホを取り少し表情を歪めた。ほんの数秒、画面を眺めてからスマホを耳に当てる。菜那は聞いちゃいけないと思い、キッチンシンクの掃除を始めた。
「はい」
初めて聞くような低くて硬い蒼司の声色に驚いた。聞いちゃいけないとわかっているのに蒼司の事が気になってしまい、つい聞き耳を立ててしまう自分がいる。変わらず硬い相槌を打ちながら額に手を当てて明らかに困っている顔を見せた。
(仕事でなにかあったのかな……? って、お客様のプライベートに踏み込んじゃダメダメ)
キュッキュッと音が鳴るくらいにシンクを綺麗に拭き上げて気を紛らわせた。
「何度も言ってるけど、俺はいかないからな」
「……いるんだよ。俺には決めた人が」
「勝手に話を進めるなよ。……って、切られたか」
――決めた人。
その言葉が菜那の中で妙にはっきり聞こえた。決めた人とは誰だろう。一般的に一番考えられるのは結婚相手、とかだと思うが蒼司の家には女の人の影は感じない。じゃあ、一体誰なんだろうか?