エリート建築士は傷心した彼女を愛し抜きたい
「菜那さん、どうですか?」


 コンコンと試着室のドアが鳴り、蒼司の声が聞こえた。


「あ、今行きます」


 ドクドクと心臓が動き出す。蒼司はなんて言うだろう。似合わない、とは蒼司の性格から言うはずがないとは思うけれど、やっぱり不安だ。意を決してドアを開けるとすぐに蒼司と目が合った。蒼司の瞳が一瞬、大きく見開き、視線が頭の先からつま先まで動く。そしてピタリと止まった。


(や、やっぱり変だったのかも……言葉が出ないほど似合わないんだわ……)


 ぎゅっとドレスの裾を両手でつかんだ。


「あ、あのやっぱり着替えて来ますっ!」


「いや、凄く似合ってます。綺麗すぎてすぐに言葉が出てこなかったんです」


 力の入っていた腕を解くように掴まれ、抱きよせられた。


「綺麗すぎて、誰にも見せたくないな」


 頭を掻き抱かれ、小柄な菜那はすっぽりと蒼司の中に包み込まれる。全身の血液が沸騰したかのように湧き上がり、身体が熱くて溶け出してしまいそうだ。

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