エリート建築士は傷心した彼女を愛し抜きたい
「嬉しいと思っていただけたんですね」


 柔らかな声が落ち込んだ頭上に降りそそぐ。そしてグッと身体を引き寄せられ、力いっぱい抱きしめられた。


「う、宇賀谷様っ……」


 菜那の両手が行き場を失いさ迷う。


「まだ返事は要りません。よく考えてください。私は長期戦になったって構いません」


「そんな……」


「俺が終わらない恋愛もあると証明してみせますよ」


 身体が少し離れ、視線が絡み合あった。真っすぐで、瞳を見ただけで本気なんだと伝わってくる。そっと頭を撫でられ、蒼司の手が頬で止まった。


「本当に、貴女って人は俺を煽らせる天才ですね」


「え……?」


 頬に冷たさを感じて驚いた。いつの間にか涙が瞳から零れ落ちている。


「その涙に俺はまだ自分に可能性があるって思ってもいいですよね?」


「っ……」


「俺たちはゆっくりと関係を進めていきましょう」


 もう一度優しく抱きしめられる。菜那はコクコクと頷くことしか出来なかった。どうして彼は自分の欲しい言葉をサラリと言ってくれるのだろう。何もかも彼にはお見通しなのだろうか。自分でもはっきりとわからないこの気持ちも。


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