エリート建築士は傷心した彼女を愛し抜きたい
 筑前煮、ネギ塩レモンチキン、鶏もも肉と厚揚げの煮物、キノコの和風マリネは電子レンジで温めればすぐに食べられる。


 ドキドキとうるさかった心臓も料理をしているうちに冷静さを取り戻し、料理が全て完成した頃には感情も落ち着いていた。カレーとミネストローネも作り、ジッパーに入れて小分け冷凍保存できるようにする。


「これでよしっ!」


 すべてを作り終え、冷ましている間に洗い物を済ませようとスポンジに洗剤を付けた。


「わぁ、今回も凄く美味しそうですね」


「っ……!」


 後ろから蒼司の声が聞こえ、振り返ると上半身裸の蒼司が首からタオルをかけて立っていた。普段から艶やかな黒髪は濡れてさらに光沢を増している。ほどよい筋肉で引き締まった身体、いつもは流されている前髪もお風呂上りだからか掻き上げられていて、普段と違う蒼司に思わずドキっとしてしまった。


「な、なんで裸なんですか!」


 まともに見るなんて不可能だと判断した菜那はぷいっと顔を戻し、シンクの中のお皿を手に取った。


「あぁ、これはちょっと煩悩退……アイディアに行き詰まってしまったのでささっとシャワー浴びてきたんです。そしたらいい匂いがするものですから誘われるように来てしまいました」


「何言ってるんですかっ」


 背中に感じる熱。シャワー上がりだから尚更感じてしまうのだろうか。恥ずかしさを紛らわすために菜那は次々と洗っていく。

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