偽恋人の恋愛事情


「戻ります」

はっきりそう言って立ち上がった俺は、少し強くなった気がした

もちろん気のせいかもしれない

でも…


「鼻血、止まりましたね」

立ち上がれば俺の方が背が高い

彼女は俺を見上げてフワッと笑った


「ありがとう」

彼女が貼った絆創膏はしっかりと傷口を覆っていて
消毒液を塗られたところがまだ少し痛い

「行ってらっしゃい」

少し首を横に倒して笑う

本当に綺麗な人だ


「あの」

保健室の扉を開けて、出て行こうとした足を止める

何を思ったのか俺は、彼女に声をかけた

振り向けば、もう俺の方は向いていなくて、出ていた道具を片していた

俺の声に反応してこちらを見る

「はい?」





「なんて名前ですか」



「…」




「城木雪音です」



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