偽恋人の恋愛事情
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2年前の夏

鮮明に覚えている記憶


あの時、名前を聞くだけ聞いて自分は名乗らなかったから彼女は俺のことなんて覚えてないと思う


でもあの後、俺はがむしゃらに先輩に立ち向かい、掴み合いの喧嘩にまで発展したので先生に止められた

揃ってお叱りを受け、それ以降は嫌がらせをされることがなくなった


俺は部活という義務感からバスケをやっていた節があったので

スッキリしたし、思い入れもなかったから2年に上がった時に部活を辞めた

それからは勉強に打ち込み、今ではあの城木雪音と並ぶほどの成績さえ手に入れた



城木雪音に会いたい
城木雪音に覚えてもらいたい

そんな一心で勉強をやったのだ

馬鹿みたいな理由だとわかっている

でも、彼女になんとか近づこうと、俺なりの苦手な努力をした


彼女が生徒会長になり、時間が経つにつれ、あの出来事は俺の大事な思い出となっていった

でも


『目には目を、歯には歯を、だったらクソにはクソをです』


彼女は変わってなかった

俺の憧れの人であり続けた


そんな彼女をもっと知りたいと思った

そんな好奇心から、この関係を提案したのだ


挑発すれば乗ってくるのはわかっていた

かなり喧嘩腰のプライドの高い人だと知っていたからだ


毎朝、そして放課後

彼女の隣に並ぶ特権を手に入れたのは

結果オーライだと思っている


そこに特別な情なんていらない

俺はあの人になりたいだけだ

強いあの人に、なりたいだけだから


そう、思っていたんだけど…

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