偽恋人の恋愛事情
「あの人…鈴本くんを馬鹿にしたんです」
…え
「私の見てくれや家柄に興味を持っただけの低脳だって…馬鹿だって…それが、私っどうしても許せなかったんです」
見てくれや…家柄?
「私たちは正式な恋人ではないし、鈴本くんが私に興味があるわけではないということは承知しています。でも…」
グッと下唇を噛む
「鈴本くんはそんな人じゃない。それはたった1ヶ月だけど一緒に過ごしてわかったんです」
…
「それなのにあの人は鈴本くんのこと、ましてや私のこともまともに知らないくせに、勝手に決めつけて私の生活を潰そうとした。それが許せなかったんです」
待って…
じゃあ、あんたがあんなに追い詰められてたのって
俺のことを言われたからだってのか?
自分じゃなくて、俺のことを?
「だから水かけてやりました」
…は?
「水、ぶっかけてやりました」
え、え?
「おかげでタガが外れて、私爆発しちゃったんです。今まで溜まっていた不満ぶちまけて、ついでに兄さんにも水かけて」
ついでに?
「言ってやりました!大嫌いだって」
…っ
「大っ嫌いだって、言ってやったんです!ざまあみろです!酷い顔してた、2人ともっ」
昂ったのだろう
すごい早口でそう連ねて肩ではぁはぁと息をする
その目は…確かに赤くなっていた
溢れそうになっている涙に、本人は気づいていなかった