偽恋人の恋愛事情



…いや、ある


私は…彼の逃げ口であると同時に
彼も、私の逃げ口であるんだ

生徒会長の仮面を、品行方正の仮面を外せる唯一の場所

家でも外せない重荷を、全部取っ払うことができる場所

心地のいい場所


そこを…失いたくない

せめて、高校を卒業するまで
せめて、彼自身にもう必要ないと言われるまで

それまでは、私にあの人は必要だ


弱いところは曝け出してはいけない

でも逃げ口にはなって欲しい


こんな矛盾した話があるだろうか

でもそうなんだから仕方ない



カッターシャツは嗅ぎ慣れないあの人の匂いがする

なんだか集中ができず思考がまとまらない

これでは今後の方針も何も立たず五里霧中で彷徨うだけになってしまう


でも…はっきりと分かっていることは一つ


彼に、恋をしてはいけない

何があっても、だ


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