偽恋人の恋愛事情
「楓、早く。手、離せ」
「…佐賀、お前…なんか変だぞ」
「…」
佐賀くんが一歩私に近づく
同時に一歩後ろに引かれる
「雪音…部屋行って」
え
「俺がいいって言うまで出てくるなよ、鍵かけて」
「か、楓く…」
「俺の合図で走って行け」
楓くんを見上げると佐賀くんから目を離さなようにしながら、冷や汗を流していた
「わ、かった」
少しの沈黙をおいて
楓くんがジリジリと後ろに下がり、私の体から手を解いた
そしてそれと同時に
「行け!」
私の肩をぐっと押し出した
訳がわからずとりあえず走った
視界の端でガッと佐賀くんが動いたのがわかった
こちらに手を伸ばしている
しかしその手が届く事なく、私たちの間に楓くんが滑り込んだ
私は混乱しながらとりあえず部屋へと向かう
バタバタと激しい音がリビングから聞こえた