偽恋人の恋愛事情
俺を真正面で睨みつけた佐賀は
チッと舌打ちをしてズカズカと出て行った
……
「はあぁぁぁぁ…」
盛大なため息をついてしゃがみ込む
「まじか…俺」
いや、本当はわかっていたことだ
2年前
初めて雪音に出会った時から、わかってたんだ
でも手の届く人じゃないから
憧れの一種だとこじつけて納得させていた
でももしそれが本当にできていたのなら、偽恋人なんて頼まないだろう
雨の夜にびしょ濡れになって駆け出さないだろう
同居したりなんて絶対しないだろう
何度も何度もキスしたくなって、抱きしめたくなって
佐賀に腹を立てたりすることなんてないだろう
本当に愚かだと思う
でも、あんな強くて綺麗でまっすぐで可愛い人のそばにいて
どうやって好きになるなと言うんだ
どうやって恋をするなと言うんだ
会うたびに、話すたびに、笑うたびに
底なしの沼にハマっていったんだ
雪音が好きだ
どうしようもないくらい好きだ
佐賀なんかに触られたくない
他の誰にも触られたくない
もし一生閉じ込めて置けるのならそうしたい
俺以外の人間に笑いかけないでほしい
そのくらい
あの人を好いてしまったんだ