偽恋人の恋愛事情
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「…ということがありました」
「へぇ、早速だね」
放課後
隣を歩くのは鈴本楓
私の偽の彼氏
驚くべきことに放課後、下駄箱でこの男が私を待っていた
カップルは下校も一緒にするらしい
なのでついでに今朝あったことと私の名演技を報告した
「俺もクラスの連中に質問攻めされたよ」
「やはり情報が回るのは早いですね」
「だね」
「ちゃんとうまく答えましたか?」
私のようになっ!フッ!
「まあテキトーに?」
て、テキトーだと!?
「あなたから持ちかけた提案でやってるんですからちゃんとやってくださいよ」
「やってるよ、それなりに」
はーん?
「なんだよその顔」
「疑わしい顔です」
「ふはっ」
なっ
笑いやがったこのやろう
「会長って面白いね」
…はっ!
これは、知ってるぞ!
少女漫画でよく見るやつだ
ヒロインと曲がり角で衝突して、イケメンが言うセリフ!
『ふっおもしれー女』
ってやつだ!!
…
いやこの場合違うな
少女漫画の場合のおもしれーはInteresting(興味深い)の方だ
だけどおそらくこの男の場合はFunny(滑稽な様)の方だ
それに、我々が恋愛に発展することはありえない
なぜならそれがこの関係を繕う上での前提条件だからだ
恋愛から逃げるための偽装カップルなのだから、そこに恋愛感情が生まれて仕舞えば全く無意味になる
そんな誤算をこの私がするわけがない
それになにより…
チラリと隣の鈴本楓を見る
この男にそういった感情が芽生える気がしない