偽恋人の恋愛事情


「今度はなんの顔?」

私が横目でじっとりと見ていると、同じように横目でこちらを見た鈴本楓が聞いた

「なぜあなたがモテるんでしょうって顔です」

そもそもわからない


確かに一般的に見ればこの男の顔は整っているだろう
いわゆるイケメンに属することは間違いない

スタイルも良いし、声だって深くて綺麗な音をしている

だけどこれらは全て外的要素だ


もちろん人間、見た目はとても大切だ

第一印象は嫌でもそこで決まるのだから


だがしかし、である。

結局は中身が良くないと人間として素晴らしいとはいえないでしょ

これは間違いなく。



「それは俺もよくわからないよ。みんなかっこいいとは言ってくれるけど。結局それだけだからな」

あ、かっこいい自覚はあるんだ

「見た目に惹かれて寄ってくる人は何人もいる。でもそいつらってさ、なぜか知らないけど俺にすごい期待をしてるんだよ。どういう人間なんだろうとか考えることもなく、ただ見た目に沿うような人格を期待してる」

…ほぉ

「それに応えるのもだるいし、なんか決めつけられてるみたいで、俺は嫌なんだ。だからこうやって逃げたの」


なるほど…


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