偽恋人の恋愛事情



「ただいま」

…しんと静まり返った家の中


鈴本楓とは途中まで帰り道が一緒だった

思ったよりも我々の家は近い

だからその分かれ道までは並んで帰ったがそこからはそれぞれの帰路を行った


あやつの家はあそこら辺なのか…

などとなんの得にもならないことを考えながら靴を揃えて無駄に大きな家に入っていく



「…ただいま帰りました」

無駄に天井の高い無駄に広いリビングに行き

無駄に豪華な椅子に座った父親の後ろ姿に声をかける

「ああ」

会話はそれで終わり


そそくさとお弁当箱を台所に持っていく

さっさと自分の部屋へ行こうと足を進めた時

「雪音」

声をかけられる


…珍しい
お父さんから私に声をかけるなんて

「はい」

「もうすぐ中間テストらしいな」

ああ、再来週か

「はい。再来週です」

「そうか。わかっていると思うが恥のない成績を取れるようにな」




「わかってます」

「晃のようにな」

「…はい」


静かに自分の部屋へ向かい、パタンと扉を閉める

……



すぅ

「くっそじじい」

ベットに身体を放り投げて枕に口を埋め、怒りを込めてそう呟く


うざすぎる

なんなんだよあれ

ほんっと嫌い

おかえりくらい言えよ!

少ない髪の毛むしりとるぞ!


はあぁぁ…


「あきらあきらあきら……お兄ちゃんばっかり…」



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